点対称操作

3次元の格子は7結晶系、14ブラベー格子に分類されることを見てきました。それらは、$a, b, c$の長さとそれらのなす角度 $\alpha, \beta, \gamma$からなる格子定数により特徴づけられますが、ここで結晶の「対称性」について考えてみます。例えば、図1.2真中の体心立方格子に着目します。この格子に$a$軸方向から体心位置の原子を突き通す串を刺します。そして、その軸を回転軸として、360度の回転を行います。この操作の前後で格子に変化は生じるでしょうか?仮に、その操作の瞬間に目をつぶっていたとしたら、その操作が行われたことを認識できないはずです。この軸に関しては回転操作が90度、180度の場合でも同じことが言えます。この場合、この格子は対称要素として、n回回転軸(n = 1, 2, 4)を有すると言います。また、この回転の操作は「点対称操作」の一つに分類されます。これまでは、格子を基本ベクトル分移動しても格子に変化が生じない「並進対称性」をみてきましたが、この節では格子がもつ対称性を点対称操作の観点から考えます。格子がもちうる対称要素を図2.1に示します。また、3次元格子がもちうるこの点対称操作の組み合わせは32種類に分類される(これは点群と呼ばれる)ことが知られています。

図 2.1: 点対称操作
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ここで、回転操作として、5回回転が対称要素として存在しないのは何故でしょうか?また、立方晶系に3回回転軸があることに気がつきましたか?当然a軸ではありません。各結晶系、ブラベー格子が有する点対称操作をよく考えてみることは、結晶の対称性、回折を理解する上で非常に重要です。実際、7つの結晶系の分類は各結晶系を特徴づける対称性によってなされています。結晶系に三斜晶、単斜晶が存在し、二斜晶がない理由を説明できますか?



Hitoshi TAKAMURA
2017-01-06