回折条件の図示:Ewald球

前節において、散乱ベクトルが逆格子ベクトルと一致するときに強い回折が起こることが導かれましたが、この条件を分かりやすく図示する方法がEwald球です。図3.11を用いて説明します。まず、実験に供する結晶を回折装置にセットしたと仮定します。そこに、波長$\lambda$の波(X線でも電子線でも良い)が入射されました。このとき、その結晶を中心として半径 $\frac{1}{\lambda}$の仮想的な球が生成し、入射波の波数ベクトル$k_0$がその球と交わる点を原点$0$として解析対象の結晶の逆格子が生成すると考えてみましょう。この球をEwald球と呼びます。このとき、実在の結晶と生成した逆格子は1対1の対応をしており、実在の結晶が球の中心で回転すれば同じ角度だけ逆格子も原点$0$を中心に回転します。こうすると回折条件が見事に図示されるのです。具体的に言うと、回折が起こる条件(散乱ベクトルが逆格子ベクトルと一致する)というのは逆格子点がこの球面上にのる場合に対応します。なぜならば、 $\vert k_0\vert=\vert k\vert=\frac{1}{\lambda}$なので、$k_0$$k$は球面上に存在します。散乱ベクトル$\vec{q} $$k-k_0$ですから$k_0$から$k$に向かうベクトルとなります。従って逆格子点がその球にのるということは、まさに逆格子ベクトル$g_{hkl}$と散乱ベクトル$q$が一致することに他ならないのです。

図 3.11: Ewald球
\includegraphics[width =.75\linewidth]{slide2-11.epsf}

この概念は非常に重要で、X線回折や透過電子顕微鏡で回折図形を観察する際に、このEwald球と逆格子の関係を自在にイメージできるようになることが材料技術者としては必須です。



Hitoshi TAKAMURA
2017-01-06