電子デバイス材料学(高村担当)練習問題解答
5月に出題し、解答例を示した欠陥化学の練習問題がよく分からないとの質問が
ありましたので、詳細な解答を以下に示します。また、追加の練習問題も参考までに示しますので
興味ある人は解いてみてください。
【問題】イオン種の欠陥としてはフレンケル型が優勢な酸化物M
Oを考える。この酸化物は、1000
C、P(O
)=10
atmにおいてイオン欠陥、電子欠陥ともにストイキオメトリックである。その条件下でのフレンケル型欠陥濃度を10
cm
、電子欠陥濃度n = p = 10
cm
として、P(O
)=10
〜 10
atmの範囲のBrouwer Mapを描け。
【解答】考えるべき欠陥生成反応式と電気的中性条件は以下のとおり。
ここに、e
は電子、 h
は正孔濃度、M
は侵入位置のM金属原子、V
はM金属原子の空孔、V
は酸素空孔である。式(1)〜式(4)に対応する平衡定数は、質量作用の法則より、
となる。ここにn、pは各々電子、正孔濃度、[ ]は各イオン欠陥濃度を示す。5つの欠陥濃度(n, p, [M
], [V
], [V
])に対して、4つの独立な生成式が与えられているので、後は以下の電気的中性条件の式を加えれば良い。
![$¥displaystyle n + [V_M^{'}] = p + [M_i^{¥cdot}] + 2[V_o^{¥cdot¥cdot}]$](img31.png) |
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(9) |
題意より、まず注目するP(O
)=10
atm近傍では、nとpが10
cm
とフレンケル対10
cm
よりも2桁大きいので、これがBrouwer近似(n = p)となる。この近似の下、式(5)と(8)より、
式(10)を式(7)に代入して、
さらに、式(11)と式(6)に代入して、
となる。よって、P(O
)=10
〜 10
atmまでのBrouwer Mapが得られた。ただし、[V
]はK
、K
が与えられていないため不定。
![¥includegraphics[scale=0.75]{fig1.eps}](img42.png)
Fig. 1: P(O

)=10

〜 10

atmのBrouwer Map
引き続き、高酸素分圧側と低酸素分圧側を拡張する必要があるが、そこでは新しいBrouwer近似が必要となる。図より、高酸素分圧側ではp = [V
]、低酸素分圧側ではn = [M
]が近似式となることは明らかである。よって、高酸素分圧側では、
低酸素分圧側では、
従って、求めるべきBrouwer Mapは次の図のようになる。
![¥includegraphics[scale=0.75]{fig2.eps}](img53.png)
Fig. 2: P(O

)=10

〜 10

atmのBrouwer Map
【練習問題】イオン種の欠陥としてショットキー型が優勢な酸化物M
Oを考える。この酸化物は、1000
C、P(O
)=10
atmにおいてイオン欠陥、電子欠陥ともにストイキオメトリックである。その条件下でのカチオン空孔濃度[V
]を2
10
cm
、電子欠陥濃度n = p = 10
cm
として、P(O
)=10
atm近傍、及び、より高酸素分圧、低酸素分圧側のBrouwer Mapを描け(3つの異なるBrouwer近似が成り立つ領域を描くという意味)。
以上
H. Takamura
2006-07-18