HDDR法によるマグネシウム合金の結晶粒微細化

 近年、マグネシウム合金はその比重の小ささから、携帯電話、モバイル電子機器、さらには自動車用構造材料として急激な需要の伸びを示しています。合金の機械的性質・加工性を改善する方法の一つとして結晶粒径の微細化がありますが、マグネシウム合金では、六方晶系であることに起因して特に延性・加工性が悪いため、この結晶粒径の微細化による室温強度や延性の向上が重要な研究課題となっています。これまで、マグネシウム合金の結晶粒微細化には主として強ひずみ加工が利用されており、その代表的な方法として下図のようなECAP(Equal Channel Angular Pressing)法があります。

この方法では、マグネシウム合金を直角に曲がった型に押し込み、その角でせん断変形を導入します。この加工を数回繰り返すことにより、1μm程度の微細な結晶粒径が達成されています。しかし、さらに微細、例えば0.1μm程度の結晶粒を得るためには新たな方法を開発する必要があります。

 そこで、我々は水素を利用するHDDR(Hydrogenation-Disproportionation-Desorption-Recombination)法に着目しています。このHDDR法は合金の、水素化、不均化、脱水素化、そして再結合といった一連の水素吸放出に伴う相変化を利用した組織制御方法で、これまでにネオジム系永久磁石材料において0.3μm程度の微細結晶粒が得られることが知られていますが、マグネシウム合金への適用例はありません。我々は、本研究に先立ち実施したMg-Al系プロチウム吸蔵合金の探索において、Mg-Al合金では水素吸蔵に伴いHDDR現象が起こりうることが見出したため、展伸材として広く実用化されているMg-Al-Zn系のAZ31合金に対してこのHDDR法が適用可能であるか、また、結晶粒微細化効果があるかについて研究を進めています。

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