図5.9は、得られた粉末X線回折パターンの例である。このパターンに現れるピークの強度分布が、構造モデルに対して式(5.1)を用いて計算し、それらが一致すれば、構造モデルは妥当なものとなる。構造モデルの可能性が幾つか考えられる場合には、ブラッグの式を変形し、
を考える。散乱角2の測定値と使用した入射X線の波長から、左辺が求められる(表5.2)。この値が面指数の2乗の和と格子定数aの2乗の比に一致する。式(5.3)の左辺、つまり表5.2の第2欄を一定値で割って、一連の小さい整数値を与える数値を見つけ出すことを考える。たとえば、第1行目の0.1828を候補と考え割ってみる。整数値が得られない場合には、さらに0.1828の, のなどの数値を使い同様の作業を行う。表では、0.1828ので第3欄の整数値が得られている。この整数値を使って各ピークの面指数を決定することができる。
なお、試料に含まれる元素の種類や組成比がわかる場合には、標準物質の回折データと比較して、物質の同定を行うことも可能である。具体的にJCPDS(Joint Committee on Powder Diffraction Standards)カードなどでは、各種物質のX線回折データが豊富に蓄積されており、それらのデータと測定データの比較を通して、物質の同定が容易に行える。