単位胞の取り方

単位胞は繰り返しの基本構造ですが、その取り方について見てみましょう。図1.2(左)は後で詳しく述べる面心立方格子という構造です。この中には4つの原子が存在します。では、この4つの原子を区別することは出来るでしょうか?原子1は見掛け上コーナーに存在し、原子2,3,4は面の中心(面心)に位置しています。しかし、原子1を原子2の場所へ移動するベクトルを全ての原子位置に作用させれば、今度は原子1が面心位置に、原子2がコーナーに存在し、かつ、単位胞の形は全く変わらないことに気づくでしょう。

図 1.2: 単位胞の取り方
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さらに、原子1,2,3,4を取り巻く環境について考えてみます。この立方体の1辺の大きさをaとすると、原子1は距離 $\frac{\sqrt{2}}{2}a$離れた6つの原子に囲まれています。この状況、配置は他の原子2,3,4についても全く同じです。すなわち、原子1,2,3,4の周囲の環境(隣接する原子の位置や距離等)は全く同等で区別がつかないのです。このような点を格子点といいます。ここで重要な点は、格子点には原子が存在しても良いし、また、しなくても良いということです。図1.2(左)の面心立方格子の単位胞には、4つの格子点が含まれています。このとき、図1.2(右)に示すように、単位胞に一つの格子点だけが含まれるように単位胞をとることが可能です。この単位胞をプリミティブ単位胞と呼びます。単位胞には幾つも取り方がありますが、どんな構造であっても必ずこのプリミティブ単位胞が存在します(図1.2(右)は面心立胞格子のプリミティブ単位胞)。



Hitoshi TAKAMURA
2017-01-06