全固体電池のための固体電解質
リチウムイオン二次電池は「エネルギー密度が高い」、「サイクル特性に優れる」などの利点から携帯電話やノートパソコン等の携帯電子機器の電源として広く普及しています。現在市販されているリチウムイオン二次電池の多くは正極にコバルト酸リチウム(Li1-xCoO2)、負極にグラファイト(LixC6)を使用しており、電圧は水の分解電圧(室温で約1.23V)を大きくこえてしまいます。そのため電解質には水溶液を使用することができず、一般的には有機溶媒に六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)などのリチウム塩を溶解させたものが用いられています。
リチウムイオン電池の模式図
現在のリチウムイオン電池は通常使用時において危険はありませんが、何らかの理由で内部短絡が生じてしまうと大きな発熱が生じます。とりわけ有機溶媒は可燃性なので、この発熱を引き金として発火する危険性があり、安全性の確保が困難であるという課題が指摘されています。現在、この安全性の課題を解決する方法として、固体電解質が注目されています。電解質に固体であるリチウムイオン伝導体を使用することで発火リスクを低減でき、安全性の向上が期待されます。(注:リチウムイオン伝導体とは固体中でリチウムイオンが動く物質を指します。)
リチウム・ボロハイドライドのイオン伝導度の温度依存性
私たちの研究グループはリチウム・ボロハイドライド(LiBH4)の115℃以上で生じる高温相がリチウム超イオン伝導性を示すことを発見しました。さらに、このリチウム・ボロハイドライドはリチウムイオンの輸率が1に近い(固体中でリチウムイオンだけが動く)ため優れたリチウムイオン二次電池用固体電解質としての応用が期待されます。私たちの研究室ではこのリチウム・ボロハイドライドの伝導度を更に上げるため、研究を行っています。