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【論文掲載】イオンビームアシストPLDにより黒色チタン系酸窒化物薄膜を開発

イオンビームアシストパルスレーザー蒸着(イオンビームアシストPLD)法をもちいて、新規な黒色チタン系酸窒化物薄膜を開発しました。既報の無機黒色材料であるクロムやカーボン・Ti-Nb系材料・Ag-Fe系材料よりも、可視光の吸収が強く、色による吸収強さの差も小さいため、ニュートラルな黒色になっています。

酸窒化チタン薄膜の吸収特性

 

酸化チタンや窒素が安定材料であるため、窒素/酸素比が広い幅で異なるチタン酸窒化を単一方法で合成することは困難でした。本研究では酸化チタンの成膜と同時に、窒素ガスをイオンビーム化させ、強さを調整して照射することで広い幅での窒素/酸素比の作りわけを実現しました。また、イオンビームの強度を増大させたときに、不純物としてイオン源からのタングステンを含むことを利用して、薄膜の黒さを改良しました。

 

この材料は、フラットパネルディスプレイのコーティングなどへの応用が期待されます。また、イオンビームアシストPLD成膜を用いることで、酸素・窒素・フッ素・水素などのアニオンを複数含む、複合アニオン材料の今後の開発の幅が広がると期待されます。

 

本成果は国際学術誌『Applied Surface Science』に掲載されます。

Black titanium oxynitride thin films prepared by nitrogen plasma-assisted pulsed laser deposition for flat-panel displays

DOI:https://doi.org/10.1016/j.apsusc.2020.147616

 

共同著者である高村先生・及川先生・石井さんには、研究遂行・論文執筆を進めるにあたって、日頃より相談にのっていただき多数ご意見もいただきました。技術部の小林さん・中野さんには評価解析において、Liz先生には英語原稿作成において、お力添えいただきました。本論文執筆にあたりご協力いただいた全ての皆さまに、心より感謝申しあげます。

 

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私にとって、初の第一著者での投稿論文です。ずっと形にしたかった、4年生の時から取り組んでいる無機酸窒化物薄膜について、まず一つ、論文としてまとめられたことに大きな喜びを感じています。博士後期課程のいいスタートダッシュが切れたかな、とも思っています!コロナ禍ではありますが、納得のいく学生生活となるように、日々研究に励んでいけたらいいなと思います♪