メインコンテンツに移動

【論文掲載】結晶中の欠陥の規則配列化によって酸化物の電気伝導特性が変化することを発見(D2戸村)

 ビスマス(Bi)、ストロンチウム(Sr)、鉄(Fe)からなる酸化物において、結晶中に存在する”欠陥”(酸素の空席)が集合して規則的に配列したり、ばらばらに分散したりする変化に伴い、電気伝導特性が大きく変化することを発見しました。本成果により、「欠陥の規則配列化を操ることで電気伝導特性を制御する」という新たな材料設計指針が得られ、デバイスへの応用などが期待されます。

 本成果は American Physical Society(アメリカ物理学会)が出版する査読付き科学雑誌 Physical Review Materials に掲載されました。https://doi.org/10.1103/PhysRevMaterials.3.125802



     



図:Bi-Sr-Fe系酸化物の電気伝導度の温度依存性と透過型電子顕微鏡像。低温側では”欠陥”(酸素の空席)が集合して規則的に配列するため電気伝導が妨げられる。一方で、高温側では欠陥がばらばらに分散するため電気が伝導しやすくなる。





 Bi-Sr-Fe系酸化物は、誘電性と磁性を兼ね備えた次世代記憶デバイス用材料として注目される他、高温では良好なイオン伝導性を示すため、固体酸化物型燃料電池(セラミック燃料電池)や酸素分離膜などの高温デバイスへの応用も期待されています。同酸化物の電気伝導特性は温度によって不連続的に変化することが知られていましたが、その原因は不明でした。電気伝導特性は上記デバイスの性能を大きく左右する物性であり、不連続変化の原因解明は重要な基礎的知見を与えることになります。本研究では、電気伝導度やゼーベック係数(温度差によって電圧が生じる現象の強さの指標)が温度や酸素分圧(周囲環境の酸素濃度)によってどのように変化するかを調査した上で、原子分解能を有する高解像度の電子顕微鏡を用いた詳細な結晶構造解析を行い、不連続変化の原因を解明しました。同酸化物の結晶中には多量の”欠陥”(酸素の空席)が存在し、それらが集合して規則的に配列すると電気伝導を妨げる一方、欠陥の規則化が崩れてばらばらに分散すると電気が伝導しやすくなります。同酸化物では温度変化に伴い欠陥の集合/分散が起こるため、それに付随して電気伝導特性が不連続的に変化するというわけです。本成果により、「欠陥の規則配列化を操ることで電気伝導特性を制御する」という新たな材料設計指針が得られ、上記デバイスへの応用などが期待されます。



 本研究の遂行にあたり、親身になって指導にあたってくださった高村仁先生、先輩の早水良明さん(現TDK)をはじめ、ご助力いただいた関係各位に感謝いたします。



 (D2 戸村勇登)