【論文掲載】 カーボンより黒いのに電気を流さないセラミックス薄膜を開発
全ての色の光を強く等しく吸収すると同時に、電気を流さない黒色コーティング材料の開発に成功しました。
この技術により、高級感あふれる黒いタッチパネルの実現が期待されます。さらに、本材料を液晶ディスプレイのカラーフィルタに使えば、映画・ゲームなどで多用される暗い色の表示がより美しくなることも期待されます。
本成果は、日本電気硝子株式会社と、2019年に高村研で学位取得した石井暁大博士(現 clemson大ポスドク)との共同研究により得られました。
開発された黒色Ag-Fe-O薄膜とその吸収スペクトル
液晶ディスプレイは、電源オフ状態でも外部光の一部入射・反射によりディスプレイ内部が透けて見えてしまいます(図a)。
パネルに黒色コーティングを施すと、電源オフ状態で内部の透けが減り、高級感のある漆黒のパネルとなります(図b)。
しかし、この黒色コーティングは黒さに加えて、指がタッチしている場所を静電気で特定するために「電気を流さない性質」が同時に求められ、その実現が困難でした。なぜなら、一般に黒い材料は電気をよく流し、黒さと電気抵抗はトレ ードオフの性質となるためです。黒い材料といえば黒鉛ですが、黒鉛は電気をよく流します。これまで、電気を流さない樹脂と黒鉛を混ぜ合わせた材料が開発されてきましたが、透明な樹脂によりその吸収強度は大きく下がります。近年では表面の凹凸を利用してあらゆる光を強く吸収する黒色材料も開発されていますが、反射防止パネルでは平滑な表面が求められるので、この方法は適していません。よって、黒さと電気を流さない性質を新しいメカニズムで両立する材料を開発する必要がありました。
そこで、私たちのグループは、電気を流さない酸化物に、光を強く吸収する金属を微細に分散させることで、強く等強度な可視光吸収(黒さ)と高い電気抵抗を同時に実現しました。
この成果は、国際学術誌 physica status solidi (RRL) - Rapid Research Letters にオンライン掲載されました。
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/pssr.202000160
また、本学のプレスリリースになっています。
カーボンより黒いのに電気を流さないセラミックス薄膜を開発 -タッチパネルで高級感のある黒色が実現可能に-
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