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水素貯蔵材料の電子状態

水素貯蔵材料は、その貯蔵密度の高さから燃料電池自動車の水素タンクへの応用が期待されています。種々の合金系の中で、Mg系水素化物は重量貯蔵密度に優れるため精力的な合金探索が行われていますが、現在のところ作動温度が高いという課題があります。そこで、本グループでは、新規に合成されたMg系水素化物や金属間化合物において、相安定性や金属—水素間結合の特徴を第一原理計算により評価しています。

通常の水素貯蔵合金は、水素の吸収・放出に伴い格子の膨張・収縮が起こります。しかし、数GPaの高圧下で合成されたMg-Y系水素化物は、水素の部分的放出に伴い体積膨張が起こります。X線構造解析と熱重量分析の結果からは、その水素の部分的放出は八面体位置にある水素の離脱に起因すると推察されました。そこで、本系に密度汎関数法の一つであるFPLAPW法を適用し、全電子エネルギーと最安定化構造の導出を試みました。図1はMgY2H9の電荷密度分布です。計算結果から、八面体位置の水素は金属—水素間結合を増強しているため、その部分的放出に伴い単位格子が膨張することが再現されました。 現在は、水素貯蔵材料の電子状態をNMR分光の観点から検証する研究を進めています。

図1: Mg-Y系水素化物の電荷密度分布

図1: Mg-Y系水素化物の電荷密度分布